空ゴト日和の庭

主に本とゲーム

7/11 読了本『ダイナー』平山夢明

 

ダイナー (ポプラ文庫)

ダイナー (ポプラ文庫)

 

 映画化の帯から、殺し屋専用のレストランという文句が面白そうで、でも映像としてのスプラッタ系ホラーがダメなのでこれは本で読むしかないなと購入。映像がダメなのに文章なら平気なのは多分自分が文章から映像変換をしないせいで、脳内に流れるのは基本的には白黒の静止画なんですよね。

内容紹介

ひょんなことから、プロの殺し屋が集う会員制ダイナーでウェイトレスをする羽目になったオオバカナコ。そこを訪れる客は、みな心に深いトラウマを抱えていた。一筋縄ではいかない凶悪な客ばかりを相手に、カナコは生き延びることができるのか? 次々と現れる奇妙な殺し屋たち、命がけの恋──。

人の「狂気」「恐怖」を描いて当代随一の平山夢明が放つ、長編ノワール小説。

序盤はひたすら暴力と血みどろ描写の連続で、これは無理な人は無理だろうなと思いながらも、私としてはこの先主人公がどうなってしまうのかとハラハラしながら読んでました。

気軽な気持ちで闇バイトに応募したカナコは騙されて拷問のすえ殺されそうになるも、ぎりぎりのところでダイナーの店主であるボンベロに買われることになる。しかし、そこは何人ものウェイトレスが殺されておりカナコはその補充要員として買われ、そこで生きるか死ぬかの攻防を繰り返すはめになる。

ちょっとしたことで殺されそうになったり脅されたりと前半は奴隷のようにただただ命令を聞き殺されないようにと命がけの状況が続くのですが、中盤あたりで色んなタイプの殺し屋と出会いカナコを救おうとしてくれる存在と出会ったりボンベロの人間的な側面も見えてきたりと精神的には楽になります。そして後半になると、なんやかんやあってボンベロとまさかの信頼関係ができあがったりして、この瞬間だけは長く続いたらいいのにと思わずにはいれなかった。しかし、この手の作品に平穏など訪れない、訪れるのはキャラが死んだときか作品が終わりを迎えた時だ、という謎の思い込みによりびくびくしながら読んでいたのですが、最後はまさかのぐっとくる展開もあったり熱くなったりでいい感じに終わりを迎えたのでびっくりでした。

平山夢明さんの作品は短編を少しだけ読んだことあるものの、その時はひたすら暗いイメージがあり、本作は確かに暴力や残酷シーンが多くあるものの勢いと熱さもくっついており最後はそのまま突っ走ったという平山さんの別の側面を観た感じでした。

 

ところで、最初に殺人犬として出てきた菊千代が後半まさかのかわいいわんこに見えることになろうとは思いもしませんでした。ボンベロとの関係もそうですが、序盤最悪の印象から徐々に変化していく関係性というのは本当に良いものですね。

 

7/6 舞台『魍魎の匣』を観てきました。

舞台「魍魎の匣」 | Nelke Planning / ネルケプランニング

 神戸「AiiA 2.5 Theater Kobe」に行ってきました。

いや、新神戸には初めて行ったのですが、名前からしててっきり三ノ宮みたいな感じを想像していたら思った以上に寂れて閑散とした場所でびっくりしました。建物は複雑に入り組んだ近代風なのに店がすっからかんで、これはどうにかした方がいいのでは、と他人事ながら思ってしまいました。時間までは適当にファーストフードでも入ろうと考えていた私は当てが外れて大分彷徨うはめになりました。これからも利用するとなると深刻です。時間つぶしのための店はわりと重要ですよ。何とかしてくださいな。

 

そんなわけで場所はアレでしたが劇場は新しくわりと良かったです。そんなに色々行ってるわけではありませんが(今までの合わせても10回くらい?多いか少ないか微妙なとこ)、シートもふかふかだし、3階席なのに舞台が見やすくて、とある劇場で1階後方当たった時は死ぬほど見えなかった記憶もあり、もしかしたらどこでもそうなのかもしれないけど、3階前列だと遮るものもなく舞台全体が観れてとてもいい感じでした。

 

 そして肝心の内容ですが、とても良かったです。

あらすじがとてもダイジェストと聞いていてどんな感じかと思っていたらとてもわかりやすくまとめたなという思いでした。場面がパッパッと切り替わって、舞台ならではの手法なのか動いてるというよりは一場面一場面を切り取り合わせたような、映像と漫画的な感じを組み合わせたまさに2.5次元という感じがしました。最近では多くなりましたがプロジェクションマッピングを使い背景に文字情報と映像を組み合わせるのもとても雰囲気にあっていて良かったです。

で、キャラクターですが、榎さんと関くんはわりとまともに、京極堂木場修はだいたいまんまでした。後、久保の狂気がすごかった。これは内面を表現する演出が組み込まれていたせいだと思うのですが本当に引き込まれました。逆に関くんは途中までほとんど内面を出さないのに突然狂いだしてどうした?!て感じでしたがまあそこは良いです。榎さんは名前の発音が思ってたのと違うと感じたけど、あれ、映画とかアニメどうだったけな。全部見てたはずなんだけど。榎木津は大体どこの分野にいってもキーパーソンというか、原作まんまにするには難しいキャラクターなので、違ってもああそういう感じにするのね、と思うことにしてるのですが舞台の榎さんは随分かわいらしくなってました。原作のままにするとそもそも話の進行の邪魔になるような台詞ばかりなので話を短縮する都合上とにかく物語を動かさなきゃならんので若干まともな人になっていましたが別にかまわん。美形のわりに天津万欄で空気読めない(読めてたけど)可愛い系な榎さんもそれはそれで良い感じでした。

総合するととにかくわかりやすかったこと。演出が良かった。演者の顔とか表情とかはなんせ3階席だったので全く見えませんでしたけど、そこは明日のニコ生でしっかりカバーしたいと思ってます。

舞台「魍魎の匣」独占最速放送 - 2019/07/07 21:00開始 - ニコニコ生放送

そう、何とニコ生で配信されるのですよ。しかもチケット買わなくてもプレミアム会員なら無料で観れるという。最高ですね。ありがとうニコ生。

ところで私は将棋のためにプレ垢ですが、将棋興味ない人は何のためにプレミアム入ってるんでしょう。ニコニコはプレミアム会員減少で大ピンチというのはよく聞くことですが、最近2.5次元舞台がプレ垢限定で無料放送することが多いし、これが何かのきっかけになったらいいですね。ニコ生はいろいろ文句もあるけど頑張って欲しいです。

 

7/1 レイジングループ

今日から7月です。
奈須さんがいつかオススメしていた『レイジングループ』アプリ版をやっているのですが、超絶面白いです。
内容としては「ひぐらし」+「人狼ゲーム」なループものなのですが、「ひぐらし」好きだった人にはめちゃくちゃ刺さると思います。
特に主人公の頭おかしいところが最高に良いです。

竹箒日記 : 2018/06

ここに「クロスチャンネル」入れてるあたり奈須さんと好み合いすぎるんですけど、頭おかしい系主人公って最高ですね。
アプリだと1章(1周目?)が無料なので気軽にプレイしてみて下さい。

www.kemco.jp

6/26 読了本『蟲愛づる姫君の婚姻』

 

蟲愛づる姫君の婚姻 (小学館文庫キャラブン!)

蟲愛づる姫君の婚姻 (小学館文庫キャラブン!)

 

 面白かった!最高だった!

毒々しいキャラクター達の毒々しいやり取り、大好きな宮野美嘉小説が戻ってきた。

ルルル文庫が消えてどうなることかと思ったけど本当に嬉しい。ありがとう。

 

「毒の姫」と呼ばれ蟲を愛するという特殊性癖を持つ玲淋。周りからは疎まれていたもののそんなことは物ともせず自由に生きていたところ、ある日、大好きなお姉様である斉国皇帝の命で魁国の王・鍠牙の元へ嫁ぐことになった。しかし、魁国の人達にはドン引きされ、王である鍠牙は玲淋のことを全く信用せず、玲淋もまた何の興味もなく過ごしていたが、ある日鍠牙の命が狙われるという事件が発生し、そこに≪蟲術≫が使われてたと知った玲淋は解決に乗り出す。

 

とにかくキャラクターたちが素晴らしい。

蟲でも人でも毒のあるものが好きと言い張る主人公、人を駒としか認識していない冷徹な斉国皇帝を最も美しいお姉さまと敬愛していたり、嫁いできた当初は全く興味なかった夫である魁国の王の”毒”のある一面が見えてくると好ましくなったりする変わった性癖がとても宮野美香作品です。

そして、女官である葉歌も初めは主人公の特殊さにあわあわするだけの常識人かと思えば謎の特技を持っていたり(まあ宮野作品レギュラーに普通の常識人なんているとは思ってなかったよ)、鍠牙の側近である利汪の影が今のところ薄いけど次がきたらきっと何かあってくれるかなと思っています。

初めは嫌い合っていた夫婦だけど、愛とか恋ではなくともお互い離れられない関係になった二人の今後の展開が楽しみでならないのでぜひとも続編をお願いします。

 

 

 

6/24 読了本『アリス殺し』

 

アリス殺し (創元推理文庫)

アリス殺し (創元推理文庫)

 

 大学生の栗栖川亜理は、ある日自分の見る夢と現実がリンクしていることに気付く。夢の中の不思議の国で死んだ人間と重なるように身近な人間が死んでく。不思議の国で犯人扱いされたアリスは、現実世界でも事件のことを調べることに。

現実世界と不思議の国、双方の人物は共に片方を夢の世界と思い、ぼんやりとしか認識できていない。そんな中でアリスと亜理は初めに接触してきた蜥蜴のビルこと井森くんとともに夢の世界の住人探し、また不思議の国での地球人探しをしていくうちに次々と夢を共有している人達に出会っていく。しかし、事件捜査をしていくうちに関係者が次々と謎の怪死を遂げていき、様相は混乱を極めていく。

 

 今作はタイトル通り『不思議の国のアリス』独特の言葉遊びや言い回しが多くあり、そういうノリが苦手な自分としてはちょっとつらかったです。

現実世界と不思議の国がどういった関係にあるのか、ファンタジーとミステリーがどういった形で収束するのか、犯人がちゃんといるのか、などを考えながら読んでいった本作でした。誰が誰であるかなどは自己申告でしかなく、ところどころにある独白を絶対の手がかりとして、多分ここらへんに何かあるんだろうなぁというところにちゃんと引っ掛けがありつつ、そこはそれやったんかい!という二重の驚きも用意されていて楽しかった。散々残酷なことをしてきた悪人が因果応報な目に合うのも個人的にはマル。世界観設定のオチも面白かった。なるほどこれなら続編できるねと思いました。

 

既に続編が出て気にはなっていますが、気長に文庫化を待ちたいと思います。

6/12 対局姿勢

最近、将棋の羽生さんがとてもつらそうに立ったり座ったりすることが多くわりと心配の声もあったのですが、そんな中、妻である理恵さんのツイートにより足の病が発覚しました。

羽生善治九段が右足踵の痛みで歩行困難 妻・理恵さんが明かす - ライブドアニュース

 

将棋の正座対局に関しては以前から正座強要は拷問だと疑問視する声とがありましたが、これをきっかけに椅子対局の導入もあるかと期待する声と、羽生さんがこうなったからといってルールを変えるのかという声もあります。(そもそもそんなルールはなく、ルールというよりマナーの域ですが)

 

個人的には、姿勢なんてどうでもいいと思っています。正座強要など時代錯誤も甚だしいといいたいところですが、そもそも何十時間も正座して将棋を指していた時代なんてないでしょう。将棋が動画中継されだしたのは最近だし、それまではカメラ用に正座シーンが撮られていただけで、”伝統”とはいつのことを言っているのでしょう。

 

将棋の何十時間もかけて対局するという異様なルールが定着したのはある意味、対局中の姿勢、行動に制約がなかったからとも思えます。

近年、それが長すぎるということで徐々に短くもなってきてますが、そりゃあ、対局姿勢や離席に文句が付く中、一日中生放送で監視されるのならそれは”長すぎる”でしょう。

 

ただ、正座か椅子か、かっこいいのはどちらかといえば、正座の方がキレイでかっこいいですね。

つまりはそういうことでしかないと思います。

 

 

6/11  読了本

 

 

「やりがいのある仕事」という幻想 (朝日新書)
 

 

 読み終わってから、大分前に発売された本ということに気づきました。

森さんのエッセイ系新書はあまり読めてないので、本屋の棚にあれば反射的に買ってしまい勝手に新刊かと思ってました。

最近、阪急広告の“50万でやりがいのない仕事か、30万でやりがいのある仕事か”なんて、個人的にはやりがいなくても30万貰えたら十分だろと思ってしまったものの、多くの人が何かしら思ったのかツイッターで炎上してましたが、タイムリーでした。

そもそも電車の広告なんて何かしら大げさで変なこと書いてるのが普通だと思っているのでいちいち気にしないのですが(不愉快というよりとんちんかんなこと書いてるなぁとは思う)、こういうことが話題になる時勢になったんですね。

 

私の場合、若い頃やりがいなんてもちろんないままかなりブラック気味な会社で働いていて、ただその頃ゲーム実況黄金期で深夜12時過ぎに帰宅して実況観るのが楽しみ楽しみで、ぶっちゃけ会社でしんどかったというよりあの時代のゲーム実況は良かったなぁなんて懐かしむ想いの方が強かったりします。物理的にはかなりやばかったのですが精神的には充実しててつまりはそこまでしんどかったわけではないんでしょう。今やれと言われたら死にますが。

だからそこを退職してからは定時で帰れる会社を選んだもののそう簡単に上手くいくわけもなく、物理的には楽でも精神的にはきつかったり、その会社の人間関係なんて入ってみないと絶対にわからないもので、世の中というのは本当に変な人が多いんだなと厳しさを知っていくばかりでした。今現在はかなりフリーで、さもフリーターのような派遣生活をしています。

 

森さんは本書と言わず色んなところで、働かなくてすむならその方がいいというふうなことをよく言っていて、働きたくて働いてるわけじゃねえわ勢からは若干の反感を買ってるような気がしないでもないのですが、ここでも働きたくない人は辞めればいいのになぜ辞めないのか、辞めないのは働いてない状態と比べて今の方がましと自分が選んでいるだけと独特の森節を炸裂しています。

 私はどちらかといえば本書のテーマに関してはほぼ森さんの主張に同意で、寧ろ仕事にやりがいを求めて悩んでる人の気持ちがわかりにくかったりします。仕事はお金を稼ぐ単なる手段だと思っているので。早くお金を貯めて働かなくても生きていける余裕がほしいですね。