空ゴト日和の庭

主に本とゲーム

8/28 読了本『十三歳の誕生日、皇后になりました。2』石田リンネ

 

十三歳の誕生日、皇后になりました。2 (ビーズログ文庫)

十三歳の誕生日、皇后になりました。2 (ビーズログ文庫)

 

茉莉花官吏伝」シリーズのスピンオフである赤奏国の話、第二弾。

赤奏国の暁月が皇帝位を簒奪したその場に居合わせた13歳の莉杏が、ちょうどいいからと皇后にされたものの、利杏は暁月のことが大好きで、何とか暁月に認めてもらいたく奮闘する。一方、暁月は皇后が必要だからという理由で皇后にした莉杏に対し罪悪感を抱きつつも適度な距離を取ろうとするものの莉杏の勢いに徐々に押されていくニヤニヤ感が見ものな本シリーズ。今回は、茉莉花シリーズ2巻で白楼国に行って暁月が不在だった赤奏国のお話。莉杏たちが必至になって暁月不在を隠そうとするものの、ぼろはボロボロと出てしまい大変なことに。

本当に赤奏国の人材不足がやばいんだなぁと読んでる側もひしひしと実感してしまう巻でした。何といっても暁月がいないというだけで何もできない。ナンバー2がいないのがひたすら痛いです。こういうのを見てしまうと海成が加わった後の赤奏国メンツがとても見たいですね。

後半、莉杏が暁月に想いを熱く語るシーンがあるのですが、あまりにも直球すぎるがゆえに私なんかは逆に幼さを感じてしまったりしたのですが、暁月は何を思ったのでしょう。落ちるのはもはや時間の問題な気もするのですが、個人的にはこの微妙な関係もめちゃくちゃ好きだったりします。莉杏よ、もうしばらくは幼く純粋でいて下さい。

 

ところで、読メの感想をちらちら見てると意外に本編を知らずに読んでる人が多い事に驚きます。もちろんこれ単体でも読めるのですが、そんなにも多いものなのですね。確かに、13歳の女の子がたまたま皇后になって皇帝にラブアタックを繰り返すも皇帝側は子供扱いしかしてくれないなんて恋愛もの大好き人間からしたらおいしすぎる設定なので、本編知らなくとも読んでみようかななんて思ってしまうその感覚、わかるっちゃわかるんですよ。茉莉花シリーズはお世辞にも恋愛してるとは言えない作品なので、そういうものを読みたい人には取っつきやすいのでしょうね。

しかし、本編も実は何気に恋愛しているので、知らない人はぜひぜひにと言うだけ言っておきたい。

8/26 読了本『今昔百鬼拾遺 河童 』京極夏彦

 

今昔百鬼拾遺 河童 (角川文庫)

今昔百鬼拾遺 河童 (角川文庫)

 

呉美由紀と中禅寺敦子の河童をめぐる話。まるで河童に尻子玉を抜かれたかのように下半身を脱がされている水死体が次々と上がってくるという怪事件が発生する。敦子は薔薇十字探偵社の益田から別の事件の相談を受けるも、それが連続事件と関係することになり関わっていくことに。

前半の美由紀たちの女学生トークや、敦子と益田くんの会話から感じる当時の情勢トークが何気に面白かった。京極堂の世界観を観ていると電話というのが本当に急速に発展した文明の利器なんだなぁと感じることが多い。それ以外の生活なんかはそこまで違うわけでもないのにね。

お話自体は、事件のあらましから真相までキレイにピースがはまるような感じで楽しくはあったもののそこまで驚きの展開はなく、登場人物たちもたまたま立ち会った事件をたまたま関係していた探偵(益田)とたまたま取材していた(敦子)とたまたま第一発見者になってしまった美由紀が解決まで導くという普通の短編小説という感じがしました。いや長編なんだけど、とてもあっさり風味の短編という感じでした。

 

いわゆる京極堂シリーズ的なもののメイン以外は読んでないのも多いのですが、女学生(美由紀ちゃん)視点は読みやすいのでこれは読んでいこうかなぁと思ってます。

 

8/18 読了本『上流階級』高殿円

 

上流階級 富久丸百貨店外商部 (小学館文庫)

上流階級 富久丸百貨店外商部 (小学館文庫)

 

このジャンルの小説を読むのもしかして初めてかもしれないんだけど(いわゆるお仕事小説的な)、これはめっちゃ面白かった。

 神戸の老舗、富久丸百貨店芦屋川店で外商員として働く鮫島静緒(37)。日本一の高級住宅地・芦屋をふくむ阪神間のセレブたちに、お買い物をしていただくのが彼女の仕事だ。ノルマは月1500万円!パティスリーでの経験と人脈を活かして奔走する静緒だったが、外商部はいずれも一筋縄ではいかないお客様がたばかり。その上、本物のセレブ出身男子が同僚として配属されてきて―。竹内結子主演でドラマ化された話題作。『トッカン 特別国税徴収官』など、大ヒット作を次々生み出す神戸在住の著者による究極のハイクラスエンタメ、待望の文庫化!

いけてる女性がとんとん拍子に困難に打ち勝ち成功していく様は観ていて爽快。そして、百貨店外商という、自分とはあまりにも縁がない世界なためかすごく新鮮さを感じ面白かった。"外商”の意味すら今回初めて正しく知ったかもしれない。

セレブのお客様にモノを売るという過程上、そこにはそれぞれのドラマがありそこに主人公である静緒も関わってくる。また、静緒自身のドラマとしても、バツイチでありながら元旦那とはまあまあの友人関係を保っていたり、なぜか同居することになったゲイの同僚とだったり、まわりの人達も濃いキャラがいっぱいいて、何というかキャラ小説風味でもあり読みやすかった。

 

正直、今までミステリーとかホラーとかファンタジーとか、非現実的なもの中心に読んでいたので、こういうのが面白いという実感がなくて避けてて、でも今回すごく面白かったので、ちょっとこういうのもいいなと思いました。

2巻があるみたいなので文庫化したらまた読んでみたいです。

 

 

8/10 映画『天気の子』観てきた

観てきました。ちなみに新開作品は『君の名は』しか知らないミーハーレベルです。音楽と映像がすげーな、まあ普通に面白いなという印象でした。

なので、今回も期待するとかしないとかではなく何となく見に行った感じです。

予告段階で、"世界のあり方を変えた物語”と謳われていたので、普通の世界から変な感じになるか、元々変な世界が普通になるのかどっちかなぁと思ってましたが、そうきましたか、という感じでした。概ね、ちらほら見えていた感想の意味はわかった感じです。後、あらすじがどんななのかさっぱりわからないで観に行ったのですが、正直、いつ本題に入るんだと思いながら観ていたのですが、どうもストーリーを説明しようとすると説明しづらいお話ですね。何を主題としてみればいいのかわからないという部分はありました。それに比べれば『君の名は』はわかりやすかったですね。あれほどヒットしたのはそこらへんにも理由はありそうです。

で、感想ですが、普通に面白かったです。

いや、私の映画の感想って基本、超面白かった、普通に面白かった、面白くなかった、しかないので良かった方です。(最近でいうなら実写ピカチュウは超面白かったです)

少なくとも次の新開作品があればまた観て見たいなと思えるほどには面白かったです。特に、教訓めいたものがなかったのがとても良かったですね、大人対子供の構図で子供ぶっちぎって自分の意志を貫いていったあたりが最高でした。大人側の理屈もわかるんですが、個人的に、そんなものはおいておいてこうしたいからしたいんだと貫いていく意思みたいなものが勝つ瞬間というのは爽快で私は好きです。

 

ということでここからネタバレあります。

 

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8/8 読了本『事故物件怪談 恐い間取り』松原タニシ

 

事故物件怪談 恐い間取り

事故物件怪談 恐い間取り

 

 「事故物件住みます芸人」として活動中である松原タニシさんが実際に住んだ物件について語る体験談らしきもの。もちろん芸人としては全然知らない人。本屋で並んでいたのをたまたま見かけて気になって購入したものです。

普通の怪談ものと違い、実際の物件の”いわく”や間取りについて焦点を当てていており、ここではどんな事件(殺人事件、自殺、孤独死)があったのか、その後どんな人が入居したがなぜか数か月後には出て行った、或は、理由はわからないが、その部屋にだけなぜか人が長く住まないなど、現実的にそこにある謎が明示されており、こういう言い方は不謹慎なのかもしれないがミステリーめいていて面白かった。

実際に住んで、そこそこの謎現状もちらほら描かれているが、”怖さ”に焦点があてられているわけではなく、ただただ現象として淡々と描かれているのも個人的にはとても好印象。後、間取り見るの大好きマンなので毎回詳しく載せてくれていて、いい部屋だなぁとか、これでこの値段は高い安い思いながら読めたので(これは本当に個人的に)楽しかった。

ただ、2章からは誰かの事故物件(人の体験談)、3章から土地の事故物件(要するに心霊スポット)についての話になり、途中から普通のよくある怪談レポートみたいになってしまってそこが残念。1章のように物件自体に焦点をあてたような話ならばもっと読んでみたかったなぁと思いました。

 

また、作者が"特殊清掃"という事故物件の清掃を行うアルバイトを体験したことについても書かれているのですが、これがすごかった。当たり前ですが、人が死んだら誰かが片づけなければ勝手にはなくなりません。遺体そのものは警察が引き取るらしいのですが、知ってますか、人って腐敗したら溶けるらしいんです。いや、言い方がおかしかったかもしれません。孤独死なんかで時間が経った遺体なんかだと壁とか床とかに体の皮膚なんかがべったりと付着して蛆がうじゃうじゃ湧いてべとべとになるらしいんです。そういうのをちゃんとキレイにする人がいるんですよ。ぶっちゃけ、殺人事件関係の小説やら映像なら良く見ていたとしてもそんなシーンは見たことがなかったので、そうだよ、そりゃそういう人がいるよなという謎の感動をしました。

 

ところで、私が一人暮らしの物件を探していた頃、3LDK築50年の平屋で2万という謎の物件があって、駅からもそこそこ近いのになぜかずっとあって何でだろうと思っていて、当時は3LDKとか広過ぎていらんと思って詳しく調べもしなかったのですが、もしかして何かしら曰くがあったのだろうかと今なら少し思います。

 

 

8/3 読了本『響野怪談』織守きょうや

 

響野怪談 (角川ホラー文庫)

響野怪談 (角川ホラー文庫)

 

怪談もの大好きなので、作者のことは詳しくないものの直観で買いました。ショートショートばりの短い話のつまったちょっと不思議系の怪談もの。面白かったです。

 響野家の末っ子・春希は怖がりなのに霊感が強く、ヒトではないものたちを呼び寄せてしまう。留守番中を狙ったようにかかってくる電話。何度捨てても家の前に現れるスニーカー。山小屋で出会った少女が寝言を聞かれるのを嫌がる理由……。些細だった怪異は徐々にエスカレートし、春希だけでなく、彼を守ろうとする父や兄たちをもおびやかしていく。
『記憶屋』著者が日常と異界の狭間へと誘う、ノスタルジック・ホラー!

 春希が体験するちょっと怖い話。それでも身の危険というほどではなく、それが何なのかわからないまま、わからないものはわからないままの方が良いという考えで置いておくのはとても"怪談"だと思いました。そのよくわからない怖いものが身の危険レベルにまで及ぶとそれはホラーとなり、その危険に対処できる存在(お祓い的な)があるとファンタジーになると考えているのですが、中盤から後半にかけてそのファンタジーに片足の突っ込んでるような存在も出てきて、個人的にはそのバランスはとてもいい感じでした。番犬の話はかわいかった。こういう存在があると”怪談”からは離れるもののこのキャラの出てくる別のお話も読みたいと思ってしまいます。とうりに関しては、絶対幽霊的な何かだろーと思っていたので正体知れた時はおっとなるほどと思わずページを見返して確認してしまいました。こういう仕掛けは大好き。

それとは別に、怪談的な怖さではなく人間的な怖さが光った話もあり(あえて題名は伏せる)、この中では異色ながらすごく印象に残りました。(あれはあの後どうしたんだろう。犯罪なのでは?犯罪ではないのか?)

 

基本的には春希の一人称で話は進んでいくものの、怖い経験をした同級生や、謎の女の子などレギュラー的なキャラもちらほらいて、何より響野家の謎がわりとあるので続編はあってもいい気がします。

作者のことはよく知らなかったのですが、とても良かったので他の作品も読んでみたいですね。

 

 

 

7/15 読了本『掟上今日子の乗車券』西尾維新

 

掟上今日子の乗車券 忘却探偵

掟上今日子の乗車券 忘却探偵

 

 西尾維新さんの作品で、もはや一番好きなシリーズ。

毎回違うバリエーションでちょっとした謎を、立場や趣向を変えて描かれており、西尾さんのこういう推理物まがいの話が本当に大好き。

 内容紹介

掟上今日子――彼女の記憶は眠るたびにリセットされる。その特性をいかし、彼女は「忘却探偵」として活動していた。そんな今日子が営業活動と称し、ボディーガードの親切守を引き連れて旅にでる。目的地もとくに決めていないという。依頼があって動くわけではないこの旅、果たしてどんな事件が待ち受けているのか。

 今回はいつかの事件で知り合った関係で今日子さん邸(?)で警備員をすることになった親切守さんが語り手として今日子さんと旅行という名の営業活動という二人旅行をする話。探偵なのだから黙っていても事件の方から来てくれるはずという今日子さんのいうがごとく、列車の中なり船上なり、宿泊先なりあらゆるところで事件に巻き込まれる(自分から首を突っ込む)二人。親切さんとは一応主従関係ということで厄介くんとはまた違った感じの関係性が面白かったとは思うもののこれだけ長い間の一人称なのにいまいち親切さんのことがわからなかったりします。始めの事件ではわりとしっかりボディーガードしてた気がして実は強い系の人か?と思ったのにバスの時では隣で起こった殺人に気付かないままだったし(あれの動機も謎というかほんまかよと言いたくなったけどそれをいうならほんまかよ!と突っ込みいれたくなる動機が今回多かった)。最後の話では厄介くんがやたらと強キャラ感が出ていて面白かったものの、厄介くん側から見たらどう見えるのか。この二人の共演もちょっとというかかなり観て見たいですね。

今日子さんシリーズは西尾作品で今のところ唯一追いかけてる作品で、他は途中で途切れてしまって、機会があればまた読みたいが今更感もあり、しかしこのシリーズ読むたびに他の西尾作品も読みたくなって困っています。平行してるシリーズは多いものの意外に単発は少ないんですよね。

 

ところで、あとがきにあった、本を読むために電車に乗る、はわかりみがありすぎました。何といっても自分も、本を読むために遠くの会社を選んだ人間で、通勤途中に本を読み、家ではゲームをするという生活が慣習化しており、休みの日とか家にいたらずっとゲームしてるので本を読むために電車に乗るはまじであるんですよね。