空ゴト日和の庭

主に本とゲーム

9/12 読了本『夜に啼く鳥は』千早茜

 

夜に啼く鳥は (角川文庫)

夜に啼く鳥は (角川文庫)

 

 これはもうめっーーーーちゃ面白かった!個人的今期ベストでしょう。

文章も美しく恩田陸とか皆川博子(解説だった)さん系統の幻想的な話が好きな人は絶対好きだと思います。

不老不死というワードに惹かれて手にとったのだけど大正解でした。

始まりは遠い昔、海で見つけた赤子を神と祀りあげた村があり、その子・シラは死なない魚を食べたことから不老不死の一族の元祖となります。
時代は過ぎ、その一族は血族を絶やさないために近親婚を繰り返し、能力を持つものは少なくなりもはや絶滅しかかってたものの、その中でも性別を持たず少女のような外見のまま150年以上を生きている御先は同じ体質を持つ"四"と出会ったことがきっかけに里を出て、街で生きていくことに。

不死というのは永遠ではなく、傷を癒す"蟲"を継承していくことで受け継がれるものなのだけど、御先は蟲から過去の記憶も受け継ぎ、ある種達観しているような諦念してるような落ち着いた性格で、四はそれまで普通に生きて御先と出会うことで自身の体質を知るきっかけとなり色々あったものの御先とともに生きることになる。この二人のコンビも面白くて、四は御先を"おじいちゃん"呼ばわりするし、御先は四に対してだけは感情をあらわにすることがある。そんな二人が、いわゆる普通(?)の人々、虐待されてる少女だったり、死にたいが口癖の女子高生だったりと出会い関わることにもなるのだけど、彼ら視点から見た不死者たちの姿を見ることもできて面白い。

不老不死をテーマにした物語の大体は死ねない体を持つものの悲哀の物語であることが多いのですが、私にとって不死者はヒーローなので彼らが誰かと出会い影響を与えられたり救われたりする話は大好きなのです。そういう意味では、他の登場人物に関しては救われたりふん切りがついたりする描写があったものの、御先だけは今を生きてる感じがしなくて、もしかして、彼らにとっての幸せが死しかないにしても今後の彼らの道行が知りたい。これは続きとかはないんでしょうかね。
作者さんについて知識がないので何ともいえないけど、続編とか書いてくれるタイプなのでしょうか。できれば続きを読んでみたいです。

取りあえず、作者の他の作品も読んでみようと思います。

 

余談ですが、解説で皆川博子さんの年齢を知りびっくりしました。

文章って衰えないんですね。