空ゴト日和の庭

主に本とゲーム

10/4 読了本『イデアの影』森博嗣

 

イデアの影-The shadow of Ideas (中公文庫)

イデアの影-The shadow of Ideas (中公文庫)

 

主人と家政婦と「彼女」の三人で暮らす日々を、幻想と夢が入り混じったような彼女の視点でゆったりと語られる。 

年の離れた主人につき従い、何でも言うことを聞いて生きていた彼女。ある時、主人がハセガワさんという英語の家庭教師を付けてくれるという。そんなことは今までなく、彼女はいつもと違う日常に舞い上がってしまい、少しずつ熱を帯びていく。しかし、そんな彼は死んでしまう。しかし、死んでしまっても夢で逢える。その後も色々な男が彼女のまわりに現れるもみんな死んでしまい、彼女は夢と現実の間を彷徨いながら現実とは自分とは何かを考えることになる。

ミステリーならば、最後の最後で彼女を客観的に見た姿が描かれたり、何等かのオチがあるんだろうなと思いながら、今作品では最後まで彼女から見た世界と世界の終わりが描かれていた。それはそれでキレイなものではあったけれど、独りの視点からだけだとそれが幻想なのか真実なのかわからないままで、おそらくそれこそが今作品の趣旨なのだろうけど、だからこそ終わってもまだ夢のようなふわふわした感覚が残ってました。

 

実は昔一度読んだことがあって(途中で気付いた)、その時は、意味わかんないしあんま面白くね、と思った記憶があるのですが、今回読んでみると、文章のキレイさに惹かれて、意味がわかるとかわからないとかはおいておいて、それはそれで謎の部分は気にはなりつつも、楽しく読めました。