昔懐かしきコバルトを思い出すようなファンタジーでした。
竜卵石という特殊な石に宿る精霊・玉妖、それは、持ち主の気を取り込み生まれる存在で、持ち主に忠実で美しく、けれど、見えるだけで触れ合えず、玉妖の作り出す"郷"の世界でなら触れ合えるため、そこに囚われ、戻らない人もいる。しかしそれでは、現実の肉体は徐々に衰えていずれ死ぬ運命だという。主人公・彩音は玉妖に魅入られた姉を救うため駆妖師となった。
始めこのあらすじを読んだ時、てっきり姉は物理的に捕らわれているかと思っていたらそうではなくて、玉妖・ほむらに魅入られて、現実世界には戻りたくなくてその世界で伴に死ぬのだと、精神的に囚われているという話だった。しかし、そうなってくると話は想像していたものとちがって、剣を使って妖なんかと戦ったりする世界観なのだけど、どちらかといえば人の意志と意志のぶつかり合いのような話で、主と離れたくないがために人を郷の中に閉じ込める玉妖がいたり、自分の言うことを聞かないからもういらないと玉妖を浄化(殺すこと)しようとするもの、また玉妖に死んだ人間の姿を重ねて"人"として甦らせようとしたり、そんな様々な人と出会い経験することで彩音は姉に対する自分の心と向き合うことになる。
正直いうと、何でこれがラノベじゃないんだっていうくらい絵がないのが悔しくて仕方ない。玉妖たちはみんな"美形"設定で、その玉妖と使い手の人間がコンビを組んで妖と対峙する姿は絶対かっこいいのに!と思うと本当に勿体ないくて。昔、少女小説系統にあったような話はこういう一般文庫に吸収されちゃう形になるのでしょうかね。
そんなわけで、人と人ならざる玉妖との絆を描いたこのシリーズ、既に全3巻と完結まで出ているらしいので続きを読んでいきたいと思います。