空ゴト日和の庭

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1/12 読了本『贖罪の奏鳴曲 』中山七里

 

贖罪の奏鳴曲 御子柴礼司 (講談社文庫)

贖罪の奏鳴曲 御子柴礼司 (講談社文庫)

 

 多額の報酬を要求する悪徳弁護士・御子柴礼司のシリーズ第一弾。といいっても、本作については"御子柴礼司"という男がどういう人間なのかを紹介したような話だった。

かつて殺人を犯し更生し弁護士になったという設定を聞いて、色々なパターンを想像できたが、殺人の理由が怨恨や正当防衛など何か理由があるわけではなくただ何となく殺したかっただけという人間が、殺人の重さを自覚するに至って反省までして弁護士になったという過程がとても珍しいと思った。何となくというサイコな理由で殺人を行った人間がそのまま大人になり弁護士になるならまだわかるんだけど(フィクション的な意味で) 、それが更生したというのが私的にはショックというか、フィクションだけど妙にリアルさをはらんでいて驚きでした。しかし、もし実際にそんな人間が近くにいたら、別に生きててもいいけど、近くにはいて欲しいくないと思ってしまうのが人情で、これから御子柴にさらなる災難が襲いかかることは想定に難くなく、想像したらわくわくとドキドキで大変つらい先が読みたい気分になりました。

そんなわけで、本作は、御子柴の過去を知り強請っていたと思わしき男が殺された為、警察は御子柴が再度殺人を犯したのではないかと御子柴の過去を調べ始める。その関係で御子柴の少年院時代の話が挿入されるわけですが、はっきりいって現代パートの事件よりも少年院時代の方がメインかのように面白かったです。死刑になってもいいと考えていた御子柴が音楽を聞いて変わり始め、友達の死や理不尽な出来事を通してどんどん人らしくなっていく。こんなん見ると応援したくなってしまうじゃないですか。でも人を殺したことは事実で(しかも理由なく)、殺された側のことを考えると応援していいのか、いやしかし法律的には彼が生きていくことに何の問題もないわけでとものすごく変な気分になります。

御子柴自身のことばかり語ってしまいましたが、ちゃんとメインの事件バートではどんでん返しによる返し返しというか、寧ろ二転三転しすぎて個人的には御子柴の話の方が頭に残ってしまったわけですが、メインの事件は中々救われない話ではありました。

二作目はリーガルミステリーものとしてはわりと真っ当なできになっているらしいので楽しみにしたいと思います。