空ゴト日和の庭

主に本とゲーム

6/2 読了本『落下世界』ウィル・マッキントッシュ

 

落下世界 上 (創元SF文庫)

落下世界 上 (創元SF文庫)

 

上下巻読了。目覚めたら、そこは空中に浮かぶ小島。まわりには記憶を失った人々で溢れていた。主人公は、自分の血で書かれたと思しき謎の地図を頼りにこの世界の秘密を探っていくことに。

導入部の掴みが完璧。なぜ皆の記憶が何もないのか、なぜ島が空中に浮いているのか、そのファンタジックな世界観から序盤はこれからどうなるのかとわくわく感が半端なかった。しかし、この空中パートとは別に、地上の科学者パートが平行して語られ、こちらは逆に愛憎と悲劇の連鎖でどう考えても世界崩壊の結果が待っているわけで、謎を知りたい以上に読むのがしんどかった。理由はともかく世界崩壊しちゃうんでしょ、という。そんな悲劇を知らず、空中パートの主人公は、自分が持っていた写真の人物や世界の謎を探るために島から島へと移動していく。そこは本当にゲームっぽいなぁと思っていたら、作者はヤングアダルト系作品を多く出しているらしく、何と、アニメ化作品もあったりするらしい。どうせならそっち方向の少年少女の冒険譚が読みたかったかもとちょっと思いました。この"ヤングアダルト"って日本でいうラノベにあたるんですかね。その線引きが良くわからない上に、それを"売り"としているレーベルがあるわけでなく、売り方も難しいですね。

そんなわけで、本作はSFといえばSFなのだけれど、どちらかといえば展開重視の話運びになっているのでファンタジーさを強く感じました。謎を追求していく過程で、少しずつパズルのピースが嵌っていくのは楽しくはあったけれど、そこまでが楽しかった。後半になると、科学者パートが寧ろメインになってきてひたすら暗い展開が続き、絶望しかない。まさに、何も知らないことが幸せだった。もう少し、空中パートの主人公の方をメインにしても良かったのではと、個人的には思いました。

決して悪くはなかったし、別の作品があるなら読んでみたいとも思ったんだけど、未翻訳なんですよね。残念。