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6/10 読了本『今昔百鬼拾遺 天狗』京極夏彦

 

今昔百鬼拾遺 天狗 (新潮文庫)

今昔百鬼拾遺 天狗 (新潮文庫)

  • 作者:京極 夏彦
  • 発売日: 2019/06/26
  • メディア: 文庫
 

面白かった。呉美由紀シリーズ第三弾。

今回はゲストキャラとして篠村美弥子さんが 登場する。榎木津シリーズの話で婚約話をぶち壊されて、わりといいキャラしてるのに単発なら勿体ないなぁと思ってただけに良かった。美由紀ちゃんと主に問答しまっくってるのが印象的。

美弥子さんの友人が失踪したと、榎木津事務所に駆け込んできてそこで美由紀と出会ったの始まり。なぜかその友人の服を来た赤の他人の自殺死体が発見され、その後また別の死体の側に友人の持ち物があったという。友人は失踪し、服だけが赤の他人が着ているという状態で発見されるというその魅力的な謎の答えというか種明かしが個人的にはとても良かった。謎のヒントがあるというわけではないけど、そこに発想が至れるかということですね。こういうパターンは大好きです。思えば京極作品ではわりとこういうの多い気がします、トリック的なものが奇抜でさらに動機も奇抜すぎて理解できないような状況でも、長編では、その奇抜さの理由が長い筆力によって説明されるため読者はその犯人の情動に納得させられてしまうという。だからこそ、今回の短編(中編?)では、その犯人の心理描写的なものがないため(口で理由は説明されるが)、そんな理由で人殺すのかよ、という半笑い的な気持ちにもなってしまうものの、動機なんて本来は理解できないものなのでしょう。

これで呉美由紀シリーズ三部作が終わってしまった。寂しいです。

京極さん自身は遅筆というわけでもなく、まあまあ出している方なのだけど、やはりこういうシリーズものは楽に読めて楽しいです。また近くシリーズものを、できればそろそろ"京極堂"シリーズの方も出して欲しいなぁなんてちらちら思います。