空ゴト日和の庭

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6/18 読了本『後宮に星は宿る』篠原悠希

 

後宮に星は宿る 金椛国春秋 (角川文庫)

後宮に星は宿る 金椛国春秋 (角川文庫)

  • 作者:篠原 悠希
  • 発売日: 2016/12/22
  • メディア: 文庫
 

 これはめちゃくちゃ面白かったです。 

一族全て殉死、つまり皆殺しが決定されてしまい、主人公の男の子は一人生き延び、後宮に女装して潜むことになるという話。

後宮もの中華ファンタジーといえば昨今よくありますが、男の子が主人公でわりと死に近い状況の中生きるために女装をして身分を隠し生きていくパターンはあまりないのではないでしょうか。主人公の遊圭は元々病弱かつボンボンということで、後宮の仕事に四苦八苦し、同僚の女の子からは虐められたりしながら、それでもパートナーの女の子とともにわりと明るめのテンションで話は展開します。そんな中、遊圭の身分に気付いたかのような美形の宦官・玄月などが登場して、物語に緊迫感が増してきます。女の子が主人公なら完全に恋のお相手です。しかし、遊圭は男の子なので睨み合い、探り合い、牽制し合い、共犯関係になる。そういう関係も大好物です。女装がバレたら、というより正体が知られたら死罪が確定している遊圭に玄月は自分の手駒として動くよう迫ってきて、この先どうなるかという、とても面白そうな具合で終わっています。

読む前からわりと有名だったので、ワクワクしながら読んだのですが、思った以上にシビアな状況で、でも思った以上に温かい話でもありました。優しい人が多いのです。その優しい人が困っている状況で自分も命が危ないのに手を差し伸べられるのが主人公なので、何となくこの世界は大丈夫なのではとその瞬間に私は思ってしまいました。優しい人が報われる世界であって欲しいですね。