空ゴト日和の庭

主に本とゲーム

10/18 読了本『蜜蜂と遠雷』恩田陸

 

蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)

蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)

 

 上下巻とも読みました。

面白かった!これは映画を観に行きたい。

読む前は中々手がつかず、それというのも私は音楽には縁がないし、何となく音楽家たちの葛藤なんかをドラマチックに描いた作品なのかなと勝手に思っていまして、しかし読んでみたら全然違って、個性豊かな天才たちが一つのコンクールに集まり競い合う様をスタイリッシュに描いた作品だった。

まず始まりが強烈だった。音楽界で一度も名前の聞いたことのない少年が音楽コンクールの予選で審査員たちを圧倒させるという天才エピソード。しかも、彼は家にピアノを持ってない。そんな彼がこのコンクールでどんな嵐を巻き起こすのかと一気に作品に引き込まれました。

基本的には一つのコンクール内の話で、一次予選、二次予選、三次予選、本選と進んでいき、その合間にそれぞれのキャラクターたちが出会い触れ合ったり、過去と向き合ったりします。そのうちの一人、天才少女としてデビューしたものの母の死によってピアノが弾けなくなってしまった栄伝亜夜のパートがとても良くて、こちらのエピソードは恩田陸さんぽいなと感じました。ピアノから離れて暮らしていたところ昔の母の知り合いという人が現れ、コンクールに出ないかと言われる。そこで迷いながらも出たコンクールで風間塵という天才に出会い圧倒され、引き上げられる。この二人の出会いが運命的で、始めは塵こそが天才だという目で見ていたのに、途中から亜夜の覚醒っぷりに、この物語は彼女こそが物語の真だったと思うようになりました。

そしてこの作品の要でもある音楽表現が独特で、一体どのように音楽を文字で表現するのだろうと思えば、私が音楽を聞いたところでさっぱり読みとれない、情景や背景、人の想いなんかを見事に文字化してくれて、本当に音楽を聞いてる気分、になれてるかわかりませんが、聞く人が聞いたら思い浮かべるられるだろうという情景を思い浮かぶことのできる人、の感情を見事に表していると思われ、とてもスムーズに読み込めました。(音楽音痴ですみません当方本当に音楽を聞かないので)

そんなわけで、あらすじからピンと来なくて長らく放置していたものの、人気があったので読んでみたいらめちゃくちゃ面白かったという稀有な本になりました。湊かなえさんの「告白」以来ですね。(あらすじ微妙だったのに読んだら面白かったという本)

 読み終えた後、このキャラクターたちの今後が読みたいと思ったものの、多分ここで終わるのが美しいんでしょうね。音楽ものといえば「のだめカンタービレ」くらいしか知らないのですが、きっといざ音楽家の道を目指したら目指したで天才たちも色々苦労などある気がします。なので、こんな風に、新たな道が開かれたその瞬間に閉めるのは良い気もします。

 

面白かったです。映画もぜひ観に行きたいと思います。