空ゴト日和の庭

主に本とゲーム

2023年下半期読書まとめ

上半期はこちら→2023年上半期覚書

年まとめは難しいので、やはり半年ごとに分けるのが正解のよう。
そんなわけで下半期面白かったもの。

・下半期ベスト

漆黒の慕情 佐々木事務所シリーズ (角川ホラー文庫)

個人的ベスト。最終月に読んだので印象深いというのももちろんあるのだけど、自分の癖にめちゃくちゃ刺さった話だった。
刺さった話とか言いつつ、ひたすらキャラが好きだった申し訳ない。

顔が良すぎるため厄介ごとに巻き込まれることが多い片山敏彦がストーカーに悩まされていて、次々とエスカレートしていき、ついには怪現象まで起こるようになり、心霊案件専門の佐々木事務所に相談にいくという話。始めの方は、普通の存在に憧れるという片山の心情に同情を感じていたのに、話が進むにつれて、実は片山自身も何かおかしいぞという雰囲気になっていく最高に良かった。最後のオチも爽快で、ホラー案件をキャラクター性がぶっ壊すといった話が好きなら絶対おススメしたい。

・海外ロマンス&ミステリーものにはまった

公爵さまが、あやしいです 行き遅れ令嬢の事件簿 (コージーブックス)没落令嬢のためのレディ入門 (mirabooks) 

海外ミステリー系統にはまったことはあっても海外のロマンス系作品をここまで面白いと思ったのは初めてだったので自分でも驚きました。いかんせん読んだ冊数が少ないので何とも言い難けど、かなり日本向きの作風に感じた。特に「没落令嬢のためのレディ入門」はなろうでよく見る、突然の婚約破棄で、お金がなくて家族が養えないため、金持ちの男を捕まえなくてはとロンドン社交界に乗り出すという話で、そこで出会った公爵に自分の意図を見抜かれ協力契約を申しかけケンカしながら徐々に仲良くなっていくというケンカップル好きにはたまらない話。「公爵さまが、あやしいです」はロマンスミステリーで、生き遅れといわれ地味で目立たないと思い込んでる主人公がとあるパーティーで殺人事件に巻き込まれ、その場にいた公爵とわいわいケンカしながらも事件を解決するという話。こちらはシリーズもので身分差もあるので、もだもだしている二人がかわいい。これからどうなるのか続きが楽しみです。

・ホラーとミステリーとキャラものの狭間で

領怪神犯2 (角川文庫)捜し物屋まやま (集英社文庫)世界の終わりのためのミステリ (星海社 e-FICTIONS)

個人的に、ジャンルレスな作品ばかりを好むなと思ってしまうのはこんな時で、別にそれぞれが特異な内容というわけではなく、その手の世界では王道といってもいいのに改めて何かといわれたら考えてしまう。まとめてラノベというのはわかりやすいジャンル分けではある。

「領怪神犯」は一見ホラーに見えるもSF感が重なっていく、イメージ的にはSFホラーキャラクターゲームのよう。不可思議な現象を引き起こす神々の調査をする役人たちの話。1巻はとにかく世界観が曖昧で、その曖昧さがこの作品の肝にもなってくるのだけど、それを踏まえての2巻目が個人的には最高に面白かった。1巻が男女コンビ+男、2巻が男男コンビ+女という感じで、そんなバディが不可思議村を調査するというシチュエーションが好きならそれだけで読んで良い。面白かったです。

「捜し物屋まやま」社交的な弟・和樹と無愛想で喋れない兄・白雄の二人で営む”捜し物屋”が関わることになった事件の話。事件簿というよりはキャラクター小説。とにかく白雄がめちゃくちゃやばい奴で最高だった。連作短編で毎回語り手が変わっていくのだけど、白雄はそも喋れないという設定なので、他者から見たらただ謎の人だったのに、最後の章の白雄一人称の話が、本当に思った以上に狂人な思考で、一気に好きなってしまった。3巻で一応終わっているのだけど、特に大事件が起きるというものでもなく日常の片隅を見せるような話の連なりなので続きがあってもいいはず。

「世界の終わりのためのミステリ」人だけが存在しない近未来のような終わりの世界。その中で、記憶のないヒューマノイドとして主人公は目覚める。この世界は何なのか、半永久的に生き、自殺の出来ないヒューマノイドたちの生活を追いながら、生きる意味を探しながら旅をする様は、探索ゲームをやってるような感覚にもなり少しずつ世界が広がっていくのがとても面白かった。独特な環境下で起こるミステリー的な出来事もそれぞれ工夫があって良かったし、旅の続編はあって良いのではと思った。

・いつものやつと新規少女小説

陸軍将校の許嫁 ~お見合いは幽霊退治の後で~ (小学館文庫キャラブン!)茉莉花官吏伝 十五 珀玉来たりて相照らす (ビーズログ文庫)薬屋のひとりごと 14 (ヒーロー文庫)

薬屋のひとりごと」は一応少年向けレーベルなんだけど、私の中では少女向けなのです。アニメ化をきっかけに大人気になってくれたのは嬉しい。何もいうことはないがすごく好きだよ。「茉莉花官吏伝」私の中ではずっと好きだけど、中々有名にはなってくれない作品No.1.物覚えがいいというだけの普通の女の子っぽい主人公が実はとても頭のいい子で、皇帝に見い出されて問題ごとを解決してあれよあれよとのし上がっていく、恋愛もあるよという作品。国外に行っての潜入調査が多かったのでイメージ的には水戸黄門。好きな人は好きだと思う。ずっと推してます。「陸軍将校の許嫁」は、正直、今回唯一新規で好きと思えた少女小説かもしれない。時代は明治、お転婆な女の子が幽霊騒動を解決するために奮闘する一方それを見守る許嫁(候補)の軍人さんという構図。べたべたした恋愛ものというより、事件の合間に挟まれるキュン度合が絶妙で最高。絶対続きが見たいのだけど、去年私が続きを出して欲しいラノベとして上げた作品*1は続きが出なかった。続きが見たいのでみんな読んで欲しい。

・その他

長い夜の国と最後の舞踏会 3 ~ひとりぼっちの公爵令嬢と真夜中の精霊~ (オーバーラップノベルスf)

ありがとう。私の最愛の作家である桜瀬彩香さんの遺稿を出版してくれて本当にありがとう。そんな気持ちしかない。

思えば一昨年は「薬の魔物の解雇理由」(くすまも)に狂わされた一年だった。一年経ち、心情的にはまあまあ落ち着いたものの、それでもくすまもの続きがきっと出てくれるはずと望みながら何の音沙汰もないといった状況下で、もたらされた長夜新刊の発表には心が湧きたった。本当にありがとう。くすまも続刊もずっと待っています。

以上、2023年下半期に印象に残った10冊でした。

そんなわけで、最近では、月1まとめ更新くらいしかしてない当ブログですが、自分的にはこのくらいの頻度がちょうどいいかなと思っているので、このまま続けていくと思います。良ければ今年も宜しくお願いします。

 

*1:「今日から悪女になります」「勘当されたので探偵屋はじめます」