空ゴト日和の庭

主に本とゲーム

1/29 読了本『航路(上)』コニー・ウィリス

 

航路(上)

航路(上)

 

 最近、これをずっと読んでました。荻原規子さんがいつかどこかで紹介されていていつか読んでみたいと思っていた作品。まだ上巻のみだけどとても面白かった。臨死体験を科学的に研究しようとする人たちの話で、SF小説と聞いてたので、近未来の話かと思ったらわりと現代的な話で、まともな人にはオカルト研究だと蔑まされたり、逆にとんでもオカルト学者からはすり寄られたりとする中、主人公は人為的に脳を臨死体験の状態にさせる実験に関わっていく。ここで、私が思い浮かべてしまったのは最近見たアニメの『イド』(人の深層心理の中に潜り込むという話)なんですけど、流石にここまでファンタジックではなかったものの、イメージ的にはずっとこれでした。臨死体験『NDE』の中に潜り込むとそこは必ず同じ場所、同じ場面にいて、それが記憶の何に類するものなのか、現実世界において確かめていく。『NDE』に潜るたびに話が進んでいき、そこがどこなのか調べていく様はゲーム的でもありました。その進み具合がとてもゆっくりで、まだよくわからない状態で上巻は終わっています。病院が舞台なので、臨死体験をした人たちとの交流も描かれており、そこで出会う人々との関係も面白い。

ここからどういった方向に話が展開していくのか、この作品において『NDE』とは何なのか、続きも早めに読んでいきたいと思います。

 

2020年読書総括

2020年の読書総数は161冊。前年に比べると、普段通りの分量に戻ってきたかなという感じです。ざっと見たところ、少女小説系統が半分くらい、少年系は多分よつ実だけなので新規は読んでません。一般文庫はいつもの作家と新規が半々。一般書の方は読みたくて目星付けてるのに読めてないという本が多いです。そんなわけで、2020年に読んで面白かった本をいくつか上げていきたいと思います。

 

◆面白かった作品(新規)

後宮に星は宿る 金椛国春秋 (角川文庫)

後宮に星は宿る 金椛国春秋 (角川文庫)

 

個人的に今期一のクリティカルヒット作。まだ読んでないこんな面白シリーズがあるだなんて思いもしませんでした。一族殲滅という理不尽な法の下から逃れるために、後宮に女装して潜むことになった主人公がそこで知り合うことになる人達の助けを借りつつ何とか乗り切る話。しかし後宮編は3巻までで、4巻以降は元の身分を取り戻し皇帝の命で動くことになり外に旅したり、陰謀に巻き込まれたりと、わりと流動的な運命を辿ります。現在シリーズ9巻目まで出ています。

贖罪の奏鳴曲 御子柴礼司 (講談社文庫)

贖罪の奏鳴曲 御子柴礼司 (講談社文庫)

 

 かつて人を殺したことのある男が更生して弁護士となった御子柴シリーズ。"殺人者"という記号をキャラとして捉えるか人として扱うかで物語においての立ち位置が変わってくるんだけど、これはかつての罪の重さを自覚して今を生きる人間の話。しかし、一歩間違えれば重く暗い話になりがちなところ、男の内面をあまり表さず外からの視点を交えてるせいか物語は淡々と進みます。かつて人を殺した男はまた人を殺したのか。読者にミスリードを促しつつも最後はエンタメ小説として爽快感をも入れてくる。重さよりも希望と力強さを感じました。

錆びた太陽 (朝日文庫)

錆びた太陽 (朝日文庫)

  • 作者:恩田 陸
  • 発売日: 2019/11/07
  • メディア: 文庫
 

 近未来、原発事故で汚染され人の住めなくなった地域をパトロールするロボットたちの元に、国税庁から派遣されたという謎の女がやってくる。毎日決まったことを繰り返すだけの日常が、その人間の登場により、かき乱されることになる。世界観の謎と、ロボットたちの在り方が徐々に明かされていく過程はミステリー的でもあり、最後には恩田作品らしく、情緒に訴えかける仕掛けもある。とても面白かったです。

最近の糸森作品の中じゃ、一番推したい作品。
出会い頭に殺されかけたのに、途中から主人公のこと絶対守るマンに変更されてそのテンションの差に不気味さを感じるものの優しくされて絆されてしまいそうになる。しかし、理由がわからないから不信感もあるという微妙な関係でここから旅が始まるかもしれないストーリー。序章みたいな1巻で物語はここから!というところなので続きが読みたいです。

 

◆面白かった作品(継続シリーズ)

アニメ化した当時に全巻をがっと読んで、それから間が空いて、2年生編に入ったと知り、久しぶりに続きから読んだらめちゃくちゃ面白くて前以上にだだ嵌りした作品。特殊なルールに縛られた学園で、特殊な環境で育った最強系主人公が無双しながら、新しい感情に出会えるかもしれない物語。一番好きなキャラは堀北兄です。よろしく。 

 本当に大好きなシリーズで、毎年入れてるんだけど、外せない。好きです。「物覚えがいい」という特技を皇帝に見初められ、官吏となった少女の立身出世物語。シリーズも9巻目となり、色々な国に茉莉花が派遣され問題ごとを解決するといった感じの様式美が整いつつあります。姉妹版ともいえる『十三歳の誕生日、皇后になりました』が恋愛ましましに対し、こちらは薄めに見えるものの、物理的には離れていても心は繋がっているような茉莉花と皇帝の関係が、とても好きです。

 

 ◆

特に冊数は決めず、この辺かなといったあたりを上げました。

次点でもう少しいうと、永瀬さらささんの『鬼恋語リ』、中村文則さん『去年の冬、きみと別れ』、京極夏彦さんの呉美由紀シリーズ、西尾維新さんの掟上今日子シリーズ等々、一年間の読了リストを眺めていたら、あれもこれも面白かったなぁと思えるものはたくさんあります。2020年は世間的には色々あったものの、個人的には中々良い年だったのではと思っています。私の場合読了数が私の精神面を表していたりするので、まあまあ良い状況だったのでしょう。今年も良い読書ライフを送りたいものです。それではここまで読んで頂きありがとうございました。

最後に、一年間161冊分の読書メーターリストをペタリしました。特に感想とかは書いてないですが、見たい人はどうぞ。↓

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2020年12月読了本まとめ

12月の読書メーター
読んだ本の数:15
読んだページ数:3827

花琳仙女伝 引きこもり仙女は、それでも家から出たくない (SKYHIGH文庫)花琳仙女伝 引きこもり仙女は、それでも家から出たくない (SKYHIGH文庫)
読了日:12月30日 著者:桜川 ヒロ
男装少女は騎士を目指す!男装少女は騎士を目指す!
読了日:12月27日 著者:浅名 ゆうな
馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow (講談社ノベルス)馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow (講談社ノベルス)
読了日:12月25日 著者:森 博嗣
竜神さまの生贄になるだけの簡単なお仕事 (ビーズログ文庫)竜神さまの生贄になるだけの簡単なお仕事 (ビーズログ文庫)
読了日:12月23日 著者:夕鷺 かのう
妹ばかり可愛がられた伯爵令嬢、妹の身代わりにされ残虐非道な冷血公爵の嫁となる (レジーナブックス)妹ばかり可愛がられた伯爵令嬢、妹の身代わりにされ残虐非道な冷血公爵の嫁となる (レジーナブックス)
読了日:12月20日 著者:赤村 咲
裏世界ピクニック4 裏世界夜行 (ハヤカワ文庫JA)裏世界ピクニック4 裏世界夜行 (ハヤカワ文庫JA)
読了日:12月19日 著者:宮澤 伊織
悪役令嬢はモブ従者を振り向かせたい (アイリスNEO)悪役令嬢はモブ従者を振り向かせたい (アイリスNEO)
読了日:12月17日 著者:夕日
悪役令嬢最後の取り巻きは、彼女の為に忠義を貫く! (アイリスNEO)悪役令嬢最後の取り巻きは、彼女の為に忠義を貫く! (アイリスNEO)
読了日:12月15日 著者:ナユタ
岸辺露伴は叫ばない 短編小説集 (JUMP j BOOKS)岸辺露伴は叫ばない 短編小説集 (JUMP j BOOKS)
読了日:12月14日 著者:維羽 裕介,北國 ばらっど,宮本 深礼,吉上 亮
クランツ竜騎士家の箱入り令嬢 箱から出ても竜に捕まりそうです (一迅社文庫アイリス)クランツ竜騎士家の箱入り令嬢 箱から出ても竜に捕まりそうです (一迅社文庫アイリス)
読了日:12月13日 著者:紫月 恵里
超鈍感モブにヒロインが攻略されて、乙女ゲームが始まりません超鈍感モブにヒロインが攻略されて、乙女ゲームが始まりません
読了日:12月12日 著者:かずは
インド倶楽部の謎 国名シリーズ (講談社文庫)インド倶楽部の謎 国名シリーズ (講談社文庫)
読了日:12月08日 著者:有栖川有栖
岸辺露伴は動かない 2 (ジャンプコミックス)岸辺露伴は動かない 2 (ジャンプコミックス)
読了日:12月04日 著者:荒木 飛呂彦
茉莉花官吏伝 九 虎穴に入らずんば同盟を得ず (ビーズログ文庫)茉莉花官吏伝 九 虎穴に入らずんば同盟を得ず (ビーズログ文庫)
読了日:12月03日 著者:石田 リンネ
The Book ~jojo’s bizarre adventure 4th another day~ (集英社文庫)The Book ~jojo’s bizarre adventure 4th another day~ (集英社文庫)
読了日:12月02日 著者:乙一

読書メーター

 

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12/30 読了本『花琳仙女伝説 引きこもり仙女は、それでも家から出たくない』桜川ヒロ

 

 

 前からちょっと気になっていたんだけど、なぜか本屋で1巻が見つからず、今回やっと見かけて買えた作品。面白かったので2巻も買います。

主人公の女の子が特殊能力&特殊な体質の持ち主で、それゆえに人を怖れ、引きこもっていたわけだが、とあることがきっかけに二人と出会い旅をして、外の世界を知ることになる。物相手なら普通にしゃべれるのに、人相手だとびくびくしていた主人公が少しずつ打ち解けていく過程は大変可愛らしい。始め引きこもりときいて、なぜそれが許されるのかと思ったものだけど、理由を知って納得だったし、これからは外で生きてく(多分)のだと思うと今後の彼らが楽しみでもある。

恋愛的な雰囲気はほとんどなかったため、じれじれ系になるのかなと思ったら、最後の最後で、あまりに自然に音速の告白をしやがったのはびっくりでした。いい意味で。思ったよりも、男の方がオセオセな感じ。いいと思います。

次巻からは皇帝の元で働きそうな雰囲気だし、恋愛主体というより、主人公のチート能力を前面に使ったお仕事系なお話にもなりそう。続きも早めに読みたいと思います。

 

12/27 読了本『男装少女は騎士を目指す』浅名ゆうな

 

男装少女は騎士を目指す!

男装少女は騎士を目指す!

 

 めっちゃ面白かった。いやめっちゃ面白かったんですよ。

ブックオフでたまたま見つけて、カズアキさんの絵に惹かれて買った作品なんだけど、予想外に大好みな作品だった。だがしかし、2018年発行と古めの作品。これは続編とか無理なのかな、と残念に思っていたら、なんと、続きがwebに残ってました。やったぜ!でも書籍で読みたかったよ!

内容は、騎士になりたい"特殊な"村育ちな女の子が男子のみの騎士学校に男装で通うことになるという男装もの。といっても、協力者がわりと上の位の貴族な人達で、おそらく、メインヒーローらしき人は主人公の正体を知ってる人なので、個人的には安心して読めます(男装ものは男装と知らずに恋愛する話が苦手なので)。平民ということで周りからは一歩おかれたり蔑まれたりするものの、その破天荒で天然な性格がまわりを振り回し、いつの間にか皆が主人公に惹かれていく、そんな話です。

 ただ、1巻においては恋愛らしきものは一切ない。最後の最後で、それらしき伏線がちらっと出ただけで。続きがでなかったのはまさかそこのせいもあるのかなーと。いや、でも私は、このくらいのレベルの男女関係とかめちゃくちゃ好きでね。正直、本好きの初期のフェルマイの関係思い出しました。あれくらいの関係がめっちゃ好き。これから先、どうなるのかまだ読んでないので何とも言えないのですが、1巻だけでも大変面白かったです。続きも読みます。

 

12/20 読了本『妹ばかり可愛がられた伯爵令嬢~』赤村咲

 

 残虐非道と怖れられた侯爵は実はそうでもなく...といういつものテンプレ系かと思いきや、何とそのままのガチヤバ公爵だったという珍しいパターン。行方不明となった令嬢はそのまま殺したりバラバラにしたりと本気で残忍な性質を持っていた公爵なんだけど、主人公・アネッサと出会ったとき、ちょっとした勘違いから、優しいふりをして誑かそうとしたため、アネッサは本気で公爵が優しい相手だと思い込む。しかし、そんなアネッサを相手に初めは騙すつもりが段々と本気で惹かれていって、というお話。そうはいっても、公爵が改心することもなく激ヤバ性質な真実を知ることなくアネッサとは両想いに、というところで終わっており、続きは!?となってしまったので、私には珍しくwebで続きを読みました。読ませて頂きました。なので、それも含めて感想を。公爵は自らのうちの魔と人の部分に揺れながら、アネッサはなんやかんやあって、公爵の真実に気付き、それでも好きだという感情に嘘はつけず、最後は納まるところに納まり、個人的には良い感じでした。

しかし、公爵の本質があまり変わってまかったり、モブに対する残虐表現など、わりと独特な作者様に見えたので、他にどんな感じの作品を書いているのかとても興味を持ちました。いくつかweb作品はあるみたいなので読んでみようかなと思っています。

 

 

 

12/12 読了本『超鈍感モブにヒロインが攻略されて、乙女ゲームが始まりません』かずは

 

 面白かった。とても面白かったんだけど、正直、あらすじ見た時はちょっと微妙かなと買うのを躊躇してしまったのであらすじで損しているのではと思ってしまいました。というか、あらすじの内容が1巻ではなくて完全に2巻の内容ですね。

あらすじでは、乙女ゲームに転生しまった系のヒロインが攻略対象ではなくモブ男子のことを好きになった、という書かれかただったけど、1巻では、そのヒロインちゃんがモブ男子こと本作の主人公(男)に恋する前の話です。

主人公は前世で妹がやってた乙女ゲームの攻略対象の幼なじみとして転生してしまったモブ男子くん、なんだけど、わりとこの主人公(男)くんがくせ者で天然でやり手で、本来ならヒロインちゃんが解決するようなトラブルに首突っ込んでは解決してしまって、意図せず男に懐かれる、みたいな話になってます。
視点が男なので、男向きか女向きかで悩んだのだけど(これって重要だと思うけど売り手としては曖昧にしたかったのか)男子同士のいちゃいちゃがあるので個人的には女向きカナと。そしてヒロインちゃんは初めは自分の邪魔をするモブ男くんに微妙な感情を向けていたものの、途中からお人よしの主人公のことが好きになっていって、、、とそこで1巻のラストでした。次からヒロインちゃんが頑張る話なのかもしれないが、今巻でいうなら、わりとチート性能持ってる主人公(男)が攻略対象キャラたちの悩みやトラブルを解決していく、というお話でした。面白かったです。
ただ、今回に関しては、男をがんがん落としていくその過程こそがが面白かったわけで、これが恋愛メインになってしまっては、どうなっていくのかなと不安もあります。鈍感主人公にアタックするヒロインちゃん、なんて部分だけ抜き出すとあまりに面白みがなくて。ただ、続きが気になるのも確かで、しかし、それは恋愛部分ではなく、私の興味に関しては、主人公くんが男の子たちとまたどんな絡みをするのかという部分だったりするので、小説の方向性と違うかもしれないね。でも続きは気になるので2巻が出たら読んでみようとは思っています。